30代女性 食品工場勤務(卵の選別)
工場のお仕事というとなんとなく物相手のお仕事なので人とあまり関わらなくて楽そうだなと思う方もいるかもしれません。
という私も若い頃はそう考えていて自分は人間相手の接客業よりも、もくもくと物と向き合う仕事の方が向いている。
そして工場=人との関わりが薄そうだから向いていそうと考えていました。
しかしその考えは勤務を始めてすぐに間違いであったことに気づくことになりました。
私が当時働いていた工場はラインを流れてくる卵の質を見極めてそれを一番良い卵、普通、質が悪い物という風に選別し、例えば綺麗な卵であればお弁当用にしたり、質が良くなければつぶしてドレッシングにしたりするというような作業内容でした。
このような作業内容を見ると卵を分けるだけで人間関係楽そう!と考えてしまいそうですが、この水槽での卵選別ラインは人間関係の問題うずまく環境だったのです。
人間関係がおかしいのは仕事を回すこと優先だから
まず第一に私の働いていた工場のラインはAとかBとかグループになっていて基本的に何か問題が起こったらライン全体の責任になります。
私は勤務を始めたばかりということもあり、一生懸命に流れてくる卵を選別していました。
しかし選別しているうちに頻繁につぶれたようなぐちゃぐちゃの卵がラインの上の方から流れてくるのを頻繁に見るようになりました。
この工場では綺麗な卵と言えないつぶれやすい柔らかさの卵は握って崩れるようなら流さずに専用のバケツに分けるのですが、なぜか分けるはずの形状の卵が握って確かめた後の状態で流れてくるのです。
そして当然のことながら間違った卵は流せないためそのたびにラインは止まり、私達のグループは毎回そのことで上司から注意を受けていました。
後で他のパートさんに話を聞くとどうやら卵をいい加減に流している人は判明していてその人には何度も注意しているけれどどこふく風なのだそう。
そしてそのことを上にも報告しているのだが頭数が減ると仕事の能率が下がるため(注意するとやめてしまうかもしれないので)そのままになっているそうなのだ。
このように工場の仕事はライン全体で作業しているため誰かの失敗がそのまま自分の失敗に直結しやすく、まじめに作業してもだんだんむなしくなってしまうことがあるのです。
当然、その人に対するモヤモヤは溜まりますからいくら物と向き合う仕事といっても最低限のコミュニケーションはとりますから雰囲気は最悪になります。
そしてこれはすでに上記しましたが雇う側はそれほど難しい作業をこなす人材を求めていないことも多いので人数がとにかく多い方がいいという場合、やる気のない人でもいつまでもやめさせられずずっと一緒に働くということもあります。
これが工場の人間関係が楽でなく比較的ドロドロしている理由の一つです。
ライン作業は人間関係の逃げ場が少ない
またこれ以外にも工場で働く=人間関係が楽ではないという理由はあります。
それはライン作業のため人同士の距離が近くなおかつ同じ場所で作業しているためその場を離れられないということです。
私の働いていた工場ラインは卵を流すため一緒に水も流していたのですが、険悪な関係同士の工員が近くにいた時などは大変でした。
向かい合って文句を言い合ったり、時には嫌いな相手に向けて卵を投げ水をかける、となりにいる人をお尻で押して作業台から落とすという人もいました。
私の場合、幸いなことにものすごく険悪な関係の人はいなかったのですが、嫌い合っている工員同士の間に挟まれてとばっちりを受けるということはありました。
工員の一人が私に「あの人と同じラインで作業しなくてはいけないなんて最悪」と何も関係ない私に言ってくるとすごい勢いで向い合った水槽の向こう側から卵が水の中に飛んでくるのです。そして私は跳ね返った水で制服がびしょびしょになるという図式です。
当然、この出来事もさして問題になることもなく私は真面目に作業しながら他人の争いに巻き込まれてとばっちりを受けるということはなくなることはありませんでした。
このように工場の作業というのはどんな工場や働き方をしているのか、その会社の体制がどうなのかということも関係してくるかもしれませんが、考えているよりも人との距離が近くライン作業の場合、距離が近くなおかつその場を離れることができないため人間関係もドロドロしていることも多いのです。
また単純作業である分、難しい仕事を要求されにくい一方でいい加減でも会社が許せる範囲であれば頭数として勤務してもらった方がいいという風に考えられることも多いです。
真剣に作業していてもいい加減に仕事をしている人のせいで作業を台無しにされる、もしくは共同責任で叱責されるということもあります。
これではより良い仕事をしようという気持ちもそがれてしまいますが工場のような仕事では実際にこれは起こりうることです。
私が働いていたのはもう10数年以上前のことですが、これから工場で働くという方にはたとえ物と向き合うお仕事でも決して人間関係が楽とは限らないということを経験者として伝えておきたいなと思います。